その時が来たら 考えよなっ!

+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

はたちの時に 私は 左足がだるくて痛くて
いつのまにか びっこをひき始めた
当時は 「JJ」の雑誌を片手に大阪中の
流行のSHOP巡りするような 若い女の子だった
ヒールの高い靴を履き おしゃれにも背伸びしてた・

両親と病院に行った私に
先生は言った
「このままじゃ 歩けなくなります
もちろん これじゃ 赤ちゃんは産めない
身体を支えられない・・
手術はいつにしましょう・・? う〜ん 4ヶ月ぐらい入院して
最初は車イスの生活になる・・
それから はずっとリハビリになるかなぁ・・・・」
大腿骨を切断して 金具でまた 繋ぎ直すらしかった・・

なんだか その言葉を私は他人事のように聞いていた記憶がある

それから・・少し・・あれた・・
夜遅くまで 飲み歩いて 周りにいる色んな人に
見守られそして・・つきあってもらった
ワガママな時期だったような記憶がある

ただ 命に別状ないことだけはわかった
赤ちゃんが産めない
足の骨を切る・・
そのことだけに おびえていた

いくつかの病院を廻って 同じ事をいわれ続け
ある病院にたどりつきひとりの先生と巡り会う
当時の阪神タイガースのチームドクターDr.Kurotuに出会う
先生は言った
「普通にしてたら いたくないんか・・?」
「どうしたら 痛いんや・・?」
「ヒールの高い靴はいて・・あっちこちあるきまわったり〜・・」
当時の私は 若い女の子らしく そのまんまを先生へぶつけた
先生は言った
「じゃ〜高い靴 はけへんかったらいいやろ・・」
「足が痛くなるまで 歩き遊ぶようなことせえへんかったらええ・」

今まで出会った先生とは全然違ってた
「手術は・・?」おそるおそる尋ねる私に先生は言った
「まず・・ちょっと様子みよ・・
高い靴はいたら あかんで・・遊び歩いたらあかんで・・」
手術はな もしかしたら 来月しないとあかんかもわかれへんけど
もしかしたら 一生このまんま もつかもわかれへん
赤ちゃんもその時に考えたらええ・・

「その時が来たら 考えよなっ!」

あれから ひと月に一度先生に会いに行った
「どうや・・?」やさしく尋ねてくれ
レントゲンを見ながら先生は笑って言う
「うん 先月とかわってないで・・・・」

かわってないで・・の言葉は毎月毎月繰り返され
いつのまにか 私は自分が足の悪い事を忘れてしまった

そして 結婚し 子供を産んだ

不思議と痛みは遠のいて
普通に 歩けるようになった
スキーも テニスも・・エアロビクスでさえしている

確かに今も調子が悪くなると 足がだるくなる
でも・・
今の所 「その時」は まだ 来ていない

きっと あの時 あの先生に出会っていなかったら
私は どこかの病院で手術を受け
違った 青春・人生を送っていただろう・・

あの時に先生が私を助けてくれた
おかげで あれからどんな辛い時も
すこし 楽天的に 物事を考えられる

追い込まれても
どこかにきっと横道が あるような 気がする
いや きっとある
そう 思っている

きっと・・ある・・